SF・ファンタジー映画を様変わりさせた『スター・ウォーズ』(1977年)の登場前、レイ・ハリーハウゼンの特撮映画が、一時期人気を集めました。特に『アラビアンナイト(千夜一夜物語)』を題材にした『シンドバッド7回目の冒険』(1958年)、『シンドバッド黄金の航海』(1973年)、『シンドバッド虎の目大冒険』(1977年)の『シンドバッド』シリーズは、人気のシリーズでレイ・ハリーハウゼンのストップモーションアニメ(ダイナメーションと呼ばれました)で描かれる様々なクリーチャー描写が好評を博しました。
『バグダッドの盗賊』は、『シンドバッド』シリーズと同じ『アラビアンナイト(千夜一夜物語)』の一篇を映画化したもの。日本では、『シンドバッド』シリーズの続きのような扱いで、宣伝されていたと思います。空飛ぶ絨毯や壺の怪人、魔法の描写に特撮が使われていて『シンドバッド』シリーズに負けないおもしろさと迫力があります。『バグダッドの盗賊』は、アメリカではテレビ映画として放送されましたが、日本やイギリスでは、劇場公開されました。
私は、子どものころ、『バグダッドの盗賊』を京都の京極東宝で鑑賞しました。京極東宝は地下に映画館がありました。地上から地下に降りていくエスカレーターの左側にこの映画のポスターが大きく描かれていて、魔法の絨毯に乗る主人公とヒロインを後ろからひねりつぶすように手を伸ばす壺の怪人がたいへん不気味だったことが、印象に残っています。