黒澤明の映画は、世界的に評価され海外の映画に影響を与えています。『隠し砦の三悪人』(1958年)が『スター・ウォーズ』(1977年)の骨子になっていることはあまりにも有名な話です。『羅生門』は、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞に輝き、旧ソ連で撮影した『デルス・ウザーラ』(1975年)は、アカデミー賞外国語映画賞を受賞、『影武者』(1980年)は、カンヌ映画祭でグランプリ(パルム・ドール)に輝いています。『七人の侍』(1954年)は、アメリカで『荒野の七人』(1960年)としてリメイクされました(『荒野の七人』は好評で、シリーズ化され3つの続編が作られました)。ハリウッドがSF映画ブームに湧く1980年には、『宇宙の7人』としてSF映画化されています。近年も『マグニフィセント・セブン』(2016年)として再々リメイクされ、ヒットしました。『羅生門』もアメリカで『暴行』(1964年)としてリメイクされ、高い評価を得ています。その後、日米合作映画『アイアン・メイズ/ピッツバーグの幻想』(1991年)として再リメイクされました。『用心棒』(1961年)も人気で、イタリアでマカロニ・ウェスタン『荒野の用心棒』(1964年)としてリメイクされ、セルジオ・レオーネ監督と音楽のエンニオ・モリコーネの黄金コンビが誕生し、主演のクリント・イーストウッドは一躍スターダムに躍り出ました。ただ、『荒野の用心棒』は、非公式なリメイク、つまり黒澤明の許可なくリメイクされた作品で、のちに黒澤明側と著作権侵害で裁判になりました。その結果、セルジオ・レオーネ側が、賠償金と配給収入の一部を支払うことで解決に至っています。『用心棒』の再リメイクが『ラストマン・スタンディング』です。今度は、黒澤明の許可を得て作られました。したがって初めての公式なリメイクということになります。『ラストマン・スタンディング』は、舞台を1932年に移した西部劇風のギャング映画に仕上げられました。
『七人の侍』を基にした近年の『マグニフィセント・セブン』は、復讐の要素を入れたり、ダイバーシティを意識した配役になっていたりと新しい要素も多くありました。それに対し、『ラストマン・スタンディング』は、舞台設定こそアメリカのギャングの抗争に置き換えていますが、ストーリーは忠実にオリジナルの『用心棒』をなぞっています。『マグニフィセント・セブン』と『ラストマン・スタンディング』を観比べると、リメイクする際のアプローチの違いが楽しめます。
私は、『ラストマン・スタンディング』を公開当時、映画館で鑑賞し、ブルース・ウィリス演じるアウトローのかっこよさと迫力のアクションを楽しみました。