空を縦横無尽に飛び回り、ホバリングなどで多彩な動きが可能なヘリコプターは、飛行機とは異なる魅力があります。『ブルーサンダー』(1983年)は、ヘリコプターをフィーチャーした最初の映画で攻撃ヘリ”ブルーサンダー”に絡んだ陰謀と迫力の航空アクションが見どころでした。特にクライマックスのロサンゼルス上空で展開されるブルーサンダーと敵ヘリコプター、ジェット戦闘機が入り乱れる戦闘シーンはそれまで誰も観たことのない映像で、観客の度肝を抜きました。『ブルーサンダー』は、翌1984年にはテレビドラマ化され、日本でも放送されました。同時期にテレビドラマ『超音速攻撃ヘリ エアーウルフ』(1984年~1986年)も登場。こちらも日本で放映され好評を博しました。したがって1980年代半ばは、戦闘ヘリが一つのブームを形作ったといえるでしょう。この潮流が、『アパッチ』を生んだといえます。『ブルーサンダー』と『エアーウルフ』が、架空の戦闘ヘリを題材にし、一種SF的な要素があったのに対し、『アパッチ』は、アメリカ陸軍の最先端の戦闘ヘリ<AH-64>アパッチとそのパイロットを描くミリタリー・アクション。いわば『トップガン』(1986年)のヘリコプター版。パイロットの訓練と恋の物語が描かれ、クライマックスにアパッチ部隊の迫力の戦闘シーンが登場します。ヘリコプター・アクションの(今のところの)到達点を見せてくれます。その後、ヘリコプターを描く映画は、日本映画『空へ―救いの翼 RESCUE WINGS-』(2008年)まで待つことになります。しかし、こちらは航空救難隊を描いたもので、アクション映画とは異なる趣でした。『アパッチ』に続くヘリコプター・アクションが登場することを期待したいと思います。
『アパッチ』の主人公ジェイクを演じるのはニコラス・ケイジ。このころのニコラス・ケイジは、まだキャリア初期で、『ペギー・スーの結婚』(1986年)、『赤ちゃん泥棒』(1987年)、『月の輝く夜に』(1987年)などドラマ重視の作品に相次いで出演し、演技派として知られていました。『アパッチ』は、そんなニコラス・ケイジが出演した初のアクション映画です。『アパッチ』の後は、再びドラマで活躍。そして、『リービング・ラスベガス』(1995年)でアカデミー賞の主演男優賞に輝いた後、本格的にアクション映画に出演するようになりました。『ザ・ロック』(1996年)、『コン・エアー』(1997年)、『フェイス/オフ』(1997年)など出演した大作アクションが次々に成功します。その後も『60セカンズ』(2000年)、『ウィンドトーカーズ』(2002年)のようなアクション映画と『天使のくれた時間』(2000年)、『コレリ大尉のマンドリン』(2001年)のようなドラマの両面で活躍しています。
私は、大学生のころ『アパッチ』を京都の京極弥生座2で鑑賞しました。アパッチ・ヘリコプターの迫力のアクションと軍隊内の恋愛ドラマを楽しみました。