『エイリアン・ネイション』は、エイリアンを移民として扱った点が斬新でした。エイリアンという言葉がそもそも「外国人」「異邦人」を意味する言葉です。「エイリアン・ネイション=異邦人の国」とは、移民社会アメリカの隠喩です。アメリカは、移民による多民族の国ですが、異民族間の婚姻は意外に進みませんでした。(対照的に、南アメリカでは、異民族間の婚姻が進みました。)したがって、アメリカは「人種のるつぼ」ではなく「サラダボウル」と呼ばれています。サラダには、ニンジン、ピーマン、キャベツなどの多彩な野菜があるように、アメリカでは、多民族がそれぞれ独自性を維持しながら暮らしています。アメリカの多くの町は、ここは日系人が多い地域、ここはベトナム人が多い地域、ここは韓国人が多い地域というふうに町が構成されています。『エイリアン・ネイション』にもニューカマーエリアが登場します。現在の多民族国家アメリカがエイリアンを移民として受け入れたらこんなふうになるのでは?という描写がリアルです。また、移民としてエイリアンを受け入れるという設定は、『第9地区』(2009年)に先駆けていました。
事件の核心に迫っていくとき、ニューカマー受け入れの時の検疫所が重要になってきます。これも移民国家アメリカならではのアイデアでしょう。ニューヨークのエリス島には20世紀前半、移民局が置かれ、検疫所でもありました。ニューカマー受け入れの時の検疫所もまた、リアリティのある設定です。