『レッド・オクトーバーを追え!』は、潜水艦ものや海洋アクション、軍事アクション、また、「ジャック・ライアン」シリーズなどによくジャンル分けされます。私は、冒険小説映画という新ジャンルを築いた一作として評価されていいのではないかと思っています。トム・クランシーの壮大で緻密な冒険小説を原作の雰囲気そのままに、スケール感たっぷりに数々の見せ場の連続で描き上げ、冒険小説の映画化作品として、手本となるような作品に仕上がっているからです。
この後も、冒険小説の映画化は、何度かなされ、玉石混淆といった様相ですが、私が冒険小説映画として成功していると感じたものを挙げたいと思います。『ロシア・ハウス』(1990年)、『ザ・シューター/極大射程』(2007年)、『アウトロー』(2012年)です。
冷戦時代、ソ連の最新原子力潜水艦レッド・オクトーバーが、アメリカ東海岸に向かっていることが判明します。アメリカは、レッド・オクトーバーはアメリカを攻撃しようとしていると判断します。一方、ソ連も、レッド・オクトーバーの撃沈に乗り出します。そんな中、CIAの分析官ジャック・ライアンは、レッド・オクトーバーの目的は、アメリカへの亡命と推測し、真意を探る行動を開始します。深海を舞台に、アメリカとソ連の駆け引きによる戦いが始まります。
見どころはジャック・ライアンのレッド・オクトーバーの真意を探っていくプロセスです。ジャック・ライアンの行動力で謎解きが描かれていきます。
また、深海での潜水艦チェイスも見どころです。当時最新のSFXがそれを実現しました。SF映画の宇宙船の撮影のように、潜水艦をスタジオの特撮ステージで撮影しています。 「ドライ・フォー・ウェット」といって、 水中シーンを水を使わずに撮影する方法が採用されました。SF映画の宇宙船のチェイスシーンのように潜水艦チェイスが描かれ、それまでの映画にはなかった迫力です。SFXは、ジョージ・ルーカスのILMが担当しました。
クライマックスは、レッド・オクトーバーとそれを撃沈しようとするソ連の原子力潜水艦コノヴァロフの戦いに、アメリカの原子力潜水艦ダラスがレッド・オクトーバーを加勢する、という海戦が描かれます。同時にレッド・オクトーバーの艦内ではジャック・ライアンと破壊工作員の戦いが描かれます。海戦と艦内の戦いが進むクライマックスは何度見てもハラハラします。