第2作、第3作でエスカレートしていた、サメが人間を喰いちぎったりする残酷描写は、『ジョーズ’87 復讐篇』では、やや控えめです。控えめといっても、ここぞ、という時にサメが登場、迫力あるシーンを見せてくれます。このあたり、ドラマをしっかり描き、サメを効果的に登場させた第1作と似ていると感じました。『ジョーズ’87 復讐篇』は、残酷描写を派手に見せるより、登場人物の心理描写を丁寧に描くドラマ重視の展開。それも、ブロディ家の物語をしっかり描き、きれいにまとめ上げるという目的ゆえのこと。ドラマ重視の展開と要所要所に登場するサメの迫力ある描写は、バランスよく、私は『ジョーズ』ファンとして最後まで楽しみました。
『ジョーズ’87 復讐篇』にマイケルの友人ジェイク役として登場したマリオ・ヴァン・ピープルズは、のちに『パシフィック・ウォー』(2016年)を監督しました。太平洋戦争末期、日本に投下される原子爆弾を秘密裏に運んだ巡洋艦インディアナポリスの物語。インディアナポリスは、日本の潜水艦に攻撃され、沈没。生存者は海に投げ出され、サメの群れに1人また1人と襲われていきます。これまた、サメの物語。そして、インディアナポリスの生存者がサメに襲われたこの話は、第1作『JAWS/ジョーズ』でサメ狩りの名人クイントから語られます。クイントもインディアナポリスの生存者でした。第1作で語られたインディアナポリスのエピソードが、『ジョーズ’87 復讐篇』に出演したマリオ・ヴァン・ピープルズによって映画化されるというのは、不思議なめぐりあわせです。『パシフィック・ウォー』もサメが人間を襲うシーンが迫力をもって描かれていましたが、『ジョーズ’87 復讐篇』同様、しっかりした人間ドラマに仕上がっていたことも記しておきたいと思います。