『クライシス2050』の見どころは、なんといっても太陽への命がけのミッションを成功させるための旅を丁寧に描いているところです。
ミッションのプロセスは、雑誌などであらかじめ公開されていました。宇宙ステーション、スカイタウンから宇宙船ヘリオスが出発。途中、小惑星ニュー・トリニティから輸送船シカゴで運ばれてきた反物質爆弾フレディとランデブーし、搭載。太陽の軌道に乗ったあと、ヘリオスからフレディを乗せた探査船ラーが、太陽に突入し、ラーもろとも爆破させるというものです。
以上のプロセスをそのつど、リチャード・エドランドのSFXで丹念に描いていきます。宇宙船同士のランデブーなど船外の様子をヘリオス船内の立体ホログラムを使って見せるところも楽しいです。
球形で、白く輝くヘリオスはじめ、登場するメカはすべてシド・ミードのデザイン。どのメカも美しさと機能性を兼ね備えたデザインで、見ごたえがあります。
このあたり、様々なメカで地球から月、そして木星への旅を丹念に描いた『2001年宇宙の旅』(1968年)を彷彿とさせるものがあり、まさに「2050年宇宙の旅」といったおもむきです。
シド・ミードが、『クライシス2050』で手がけたメカのデザインは、どれも洗練され、素晴らしいものに仕上がっていますが、反物質爆弾フレディは、さらに人工知能搭載という味付けがなされていて、ユニークな存在になっています。登場人物と対話し、ときに気分を言葉で表現する描写があり、印象的です。今でこそ、人工知能(AI)は、なじみのある言葉になりましたが、このあたり、時代を先取りしていました。