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3人のゴースト(4)

3人のゴースト(1988年アメリカ 日本公開: 1988年)Scrooged

4. 見どころ!~自己中心的な毒舌家からの変身!観客を楽しませるビル・マーレイ!~

 とにかくビル・マーレイのコメディ演技が楽しい『3人のゴースト』。自己中心的な毒舌家という強烈なキャラクターで笑わせてくれます。1時間40分の上映時間を小気味よいテンポで一気に見せてくれます。
 『クリスマス・キャロル』のスクルージは金貸しでした。貧しい人々が住む19世紀のロンドンの下町では、金貸しは影響力があります。『3人のゴースト』のスクルージこと、ビル・マーレイ演じるフランク・クロスはテレビ局の社長という設定。ですから、ロンドンの下町から全米、ひいては全世界に影響力のある人物にスケールアップされています。そして、強欲で視聴率のためなら手段を選ばない人物として描かれます。サンタクロースが、銃を持って、北極を襲うテロリストと闘う「トナカイが死んだ日」というドラマをクリスマスに放送する番組として用意していたり、自分が作ったクリスマスに生放送する「スクルージ」のCMに意見を言った社員をクビにし、クリスマス・イブに息子を病院に連れて行かないといけない秘書に残業させる、とやりたい放題。
 そんなフランク・クロスという人物がどのようにして出来上がったのかが<過去のゴースト>の来訪によって明かされます。家族に恵まれず、少年時代はテレビだけが友達。少年時代の思い出はすべてテレビの思い出。少年時代に出会った女の子との出会いの思い出は、実はテレビドラマ『大草原の小さな家』だったという具合。テレビ局で働くようになって恋人クレアと出会い、幸せな日々を過ごしますが、1か月前から約束していた親友とのクリスマス・イブの食事をやめて、急に誘われた社長との食事を選んだことから、クレアと破局します。出世を優先させたこの出来事がきっかけに人生の歯車が狂いだし、思いやりや優しさとは無縁の自己中心的な毒舌家フランク・クロスが出来上がったことがわかります。
 そんな強烈なキャラクターだからこそ、ラストで見せるフランク・クロスの改心と思いやりに満ちたメッセージは感動的です。
 映画が、伝えたいことは単純なこと。悔い改め、慈善と思いやり、親切、優しさをもって生きること。フランク・クロスは、現代社会でそれらを見失っている私たち自身であり、『3人のゴースト』は、私たちへの問いかけだといえるでしょう。『3人のゴースト』は、私たちに手本となる人物を提示しています。それは、貧しい人々のシェルターで働くクレアです。クレアは、フランク・クロスとは対照的に慈善の心、思いやりをもって生きてきた人物として描かれています。
 ラストで登場人物が皆で合唱する歌が印象的です。「あなたの心に愛を。そうすればあなたにとっても私にとってもこの世はいい場所になる」という歌詞。この歌詞こそが『3人のゴースト』のテーマです。
 この歌をバックにビル・マーレイが最後まで笑わせてくれます。まずこっち側の人、次は反対側の人という具合に観客をこの歌の合唱に参加させるのです。観客を巻き込むエンディングは、いまだに珍しいでしょう。アメリカの観客はきっと大合唱して楽しんだに違いありません。私が『3人のゴースト』を鑑賞した試写会では、みんな静かにこのエンディングを見つめていました。少しシュールな思い出になっています。
 奇想天外なSFXも満載の『3人のゴースト』。ビル・マーレイのコメディ演技に派手なSFXをプラスという作り方は、『ゴーストバスターズ』と同じです。SFX技術が飛躍的に向上した1980年代後半。じゃあ、SFXで『クリスマス・キャロル』を蘇らせたらどうなるか、と映画人たちが楽しんで作った、そんな雰囲気が漂う作品でもあります。

『3人のゴースト』(1)『クリスマス・キャロル』の映画化!は、こちら。