ティムとノラは不仲で別れようとしていて、コーネル家は壊れていくところでした。そこにマイケルらが押し入ることで、マイケルとティムはコーネル家の主導権を争うことになります。コーネル家の場面で印象的なのが、家の中央に位置する大きな階段です。最初、言い争うティムとノラが描かれますが、去っていくティムをノラが階段の上から見下ろします。ティムへの不信感をもつノラの心は固く、浮気を反省するティムを受け入れることはできません。ノラによって家も売りに出されようとしていて、主導権は階段の上から見下ろすノラにあります。
マイケルに家を占拠された中で、ティムが家族を守るために毅然とした態度で戦います。最初はマイケルに圧倒されますが、マイケルに抵抗することで逆に家族は結束していき、ティムも威厳を取り戻していきます。ティムは弁護士で、企業弁護士から刑事弁護士に専門を変えたという経緯と、専門を変えた理由が西部劇の保安官に憧れていたからということがティム自身によって語られます。まさに西部劇の保安官のように、ティムは家族を守るヒーローになっていくのです。最後にティムは、敗北したマイケルを2階の部屋から引きずり出し、階段から突き落とします。そして、今度は階段の上からティムが階下に横たわるマイケルを見下ろすのです。ここがマイケルからティムが主導権を取り戻したことを決定づける場面です。さらにティムはマイケルを玄関から多数のスナイパーが待ち受ける外に放り出し、マイケルは破滅します。そして、ティムとノラは和解し、家族は愛を取り戻します。
『逃亡者』は、ティムの父親としての復権のドラマであり、壊れかけたコーネル家が再生していく物語でもあるのです。