• 映画の思い出を語っていきます!

春来る鬼(5)

春来る鬼(1989年日本)

5. 見どころ②!~キャラクターのおもしろさ!~

『春来る鬼』は、魅力的なキャラクターたちが、骨太のドラマを引っぱっていきます。主人公のさぶろうしは、強靭な肉体をもつ若く純粋な青年。ゆのとの愛に生きるために、ゆのを連れ北の浜から逃れてきました。ゆのもまた純粋で清楚な女性。さぶろうしを支え、見守ります。
 くっくねの爺は、厳しさと温かさをもち、さぶろうしを導くメンターです。『スター・ウォーズ』(1977年)のオビ・ワンのイメージ。演じる三船敏郎は実際にオビ・ワン役をオファーされ、断ったという話が残っています。『春来る鬼』を観たとき、三船敏郎のオビ・ワンが、くっくねの爺として実現したと感じました。ですから、私は『春来る鬼』を日本昔話版『スター・ウォーズ』として楽しんだわけですが、とすると、ルーク・スカイウォーカーがさぶろうしで、ダース・ベイダーは、頭屋ということになります。仮面をつけて登場する滝田栄の頭屋は、不気味さと迫力があり、ダース・ベイダーに負けない存在感。さぶろうしを頑なに拒絶するのですが、実はさぶろうしのたくましさに若いころの自分の姿を重ね、誇りが傷つけられていたのでした。津島恵子演じる口走りのばんばもさぶろうしとゆのに敵対する存在ですが、最後に哀しい過去と頭屋との意外な関係が明かされます。
 さぶろうしは、最終的に村の呪われた起源を暴き、浄化するわけで、英雄へと成長します。さぶろうしの前にたちはだかる敵としての頭屋、さぶろうしを導くメンターとしてのくっくねの爺、彼らの存在感とキャラクターとしての味わいが、『春来る鬼』をより普遍的な英雄伝説にならしめているのです。

 さぶろうしという新しい英雄が、くっくねの爺と船出するエンディングに、クレジットが画面の奥から順番に飛んでくるところも楽しく、最後まで手が凝っている作品です。

『春来る鬼』(1)独特のアプローチで挑んだヒロイック・ファンタジー!は、こちら。