『トップガン』(1986年)は、エポックメイキングな作品でした。ジェット戦闘機<F-14トムキャット>にカメラを搭載し、迫力のスカイアクションをスクリーンに再現。そして全編に流れるロックが映像にさらなる疾走感を与え、まさにMTVのような映画で、観客にとって初めての映像体験でした。この衝撃は『未知との遭遇』(1977年)と『スター・ウォーズ』(1977年)が与えた衝撃に匹敵するものだと思います。『未知との遭遇』と『スター・ウォーズ』がSF映画というジャンルをアップデートし、多くのフォロワーを生み出したように、『トップガン』もまた航空アクションというジャンルを切り拓き、類似の作品が後に続くことになりました。また、トム・クルーズは、日本では同時期に公開された『トップガン』と『ハスラー2』(1986年)の大ヒットで、一躍スターダムに躍り出ました。航空アクションを映画のメインストリームに押し出した『トップガン』ですが、実は『トップガン』の少し前にその序章ともいうべき作品が公開されています。『アイアン・イーグル』(1986年)がそれで、これまた若者を主人公に、戦闘機による迫力の空中戦が描かれ、バックにロックが流れるというもの。『トップガン』が引き起こした航空アクション・ブームの中、主人公のメンターを演じたルイス・ゴセット・ジュニアを主人公に『メタル・ブルー』(1988年)、『エイセス/大空の誓い』(1992年)、『アイアン・イーグル4』(1995年、日本未公開)という3つの続編が作られました。『トップガン』の影響を受けて日本では、織田裕二主演で航空自衛隊を描いた『BEST GUY ベストガイ』(1990年)が作られました。また、『トップガン』をパロディにしたチャーリー・シーン主演の『ホット・ショット』(1991年)も作られました。当時最新鋭のステルス戦闘機を題材にした『インターセプター』(1992年)も『トップガン』の影響下の作品といえます。2000年代に入っても、近未来を舞台にA.I.搭載の戦闘機を描いた『ステルス』(2005年)やフランス映画『ナイト・オブ・ザ・スカイ』(2005年)が作られました。そして、36年ぶりの続編『トップガン: マーヴェリック』(2022年)が現在公開されていて、大ヒットを記録しています。このように今日まで続く航空アクション映画の系譜の中に『アパッチ』も存在します。『アパッチ』は、『トップガン』でジェット戦闘機を使ってやってみたことを、戦闘ヘリで再現したもの。『トップガン』のスタッフが『アパッチ』にも参加し、本家に負けない航空アクションシーンを作り出しています。