『イヤー・オブ・ザ・ガン』は、主人公が知らず知らずのうちに陰謀の渦中に引きずり込まれる様を描く点で、巻き込まれ型サスペンスといえます。巻き込まれ型サスペンスは、アルフレッド・ヒッチコック監督の『知りすぎていた男』(1956年)、『北北西に進路を取れ』(1959年)という古典的名作からロマン・ポランスキー監督の『フランティック』(1988年)など、見ごたえのある娯楽作が多いジャンルです。『イヤー・オブ・ザ・ガン』は、このジャンルの中でもかなりシリアスに作られている点で異色といえます。
また、『イヤー・オブ・ザ・ガン』は、政治サスペンス、国際謀略物でもあります。国際謀略物では、ジェームズ・ボンドなどのスーパースパイが活躍する作品が多いですが、『イヤー・オブ・ザ・ガン』は、平凡な若者を主人公にしている点でリアリティと臨場感があります。同時期に『チャイナシャドー』(1990年)、『ロシア・ハウス』(1990年)という同傾向の作品(平凡な主人公が謀略の中に立たされる)が相次いで公開され、『イヤー・オブ・ザ・ガン』共々、劇場で楽しんだことを覚えています。