メリアン・C・クーパーが製作・監督を務め、ウィリス・H・オブライエンが特撮を担当した『キング・コング』(1933年)は、怪獣映画の原点として、今も多くの人々に支持されています。ウィリス・H・オブライエンの手によるストップモーション・アニメで描かれるキングコングが、何といっても見どころです。前半の髑髏島のシークエンスでは、ティラノサウルス、ブロントサウルス、ステゴサウルスなどの恐竜も登場。キングコングとティラノサウルスの戦いは圧倒的な迫力があります。後半のニューヨークのシークエンスでは、エンパイア・ステートビルに登ったキングコングと飛行機が激闘を繰り広げます。キングコングに愛される女性アン・ダロウを演じたフェイ・レイも「絶叫女優」の元祖として注目されました。『キング・コング』を成功させた製作会社RKOは、同年、続編の『コングの復讐』(1933年)を発表します。前作と同様、ウィリス・H・オブライエンが特撮を担当。前作でキングコングをニューヨークに連れてきたロバート・アームストロング演じるカール・デナムが再び髑髏島を訪れ、キングコングの息子と出会うストーリーでした。
続いて、キングコングを映画化したのは日本の東宝でした。東宝は、RKOからキングコングの権利を取得し、東宝創立30周年記念作品として『キングコング対ゴジラ』(1962年)を発表。ゴジラとキングコングが競演するという怪獣映画ファンにとって夢の企画の実現で、大ヒットしました。東宝は、姉妹編ともいえる『キングコングの逆襲』(1967年)を製作します。キングコングの対戦相手としてロボット怪獣のメカニコングが登場しました。
1970年代に入り、『ジョーズ』(1975年)の大ヒットで動物パニック映画が流行しました。イタリア出身のプロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスは、その流れに乗って『キング・コング』(1933年)のリメイクを企画します。同じころ、ユニバーサル映画も同じ企画を立てていて、両者が裁判で争った結果、ラウレンティス側が勝利しました。そして、ラウレンティス製作、『タワーリング・インフェルノ』(1974年)のジョン・ギラーミン監督のコンビで『キングコング』(1976年)が完成。公開されるや大ヒットしました。ジェフ・ブリッジスが主演し、ジェシカ・ラングのデビュー作となったこの作品は、『キング・コング』(1933年)のストーリーを現代を舞台にアップデート、ラストでキングコングは、ニューヨークの世界貿易センタービルに登り、ヘリコプター部隊と死闘を繰り広げました。撮影用に実物大のキングコングも作られ、話題になりました。キングコングを再現したカルロ・ランバルディは、アカデミー賞視覚効果賞を受賞しました。この『キングコング』の続編が『キングコング2』です。
その後、2000年代に入り、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ(2001年~2003年)を成功させたピーター・ジャクソン監督が『キング・コング』(2005年)を発表しました。『キング・コング』(1933年)の完璧なリメイクともいえる作品で、CGによるキングコングが登場しました。『キングコング』(1976年)では再現できなかった髑髏島でのキングコングと恐竜の戦いや、人間が不気味な怪物に襲われるシーンなどが最新のVFXで見事に映像化され、ラストのニューヨークのシークエンスまで3時間の上映時間を感じさせない疾走感で一気に見せきります。
2010年代に入り、レジェンダリー・ピクチャーズが『GODZILLA ゴジラ』(2014年)を第1作に「モンスターバース」シリーズを始動しました。その第2作が『キングコング: 髑髏島の巨神』(2017年)でした。髑髏島を舞台にキングコングが大暴れしました。そして、第3作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019年)を経て、2021年に、第4作『ゴジラVSコング』(2021年)が公開されました。『キングコング対ゴジラ』(1962年)から約60年ぶりにゴジラとキングコングの激闘が描かれた『ゴジラVSコング』は、国際的なキャスト、地球空洞説を絡めたストーリー、ゴジラとキングコングの戦いにメカゴジラも参戦と見どころの多い作品に仕上がりました。クライマックスでは、ゴジラとキングコング、メカゴジラの三つ巴の戦いが、香港の摩天楼を舞台に描かれます。キングコングのストーリーは、前半が髑髏島、後半が摩天楼ニューヨークという描かれ方をされてきましたから、前作『キングコング: 髑髏島の巨神』と『ゴジラVSコング』で1つの物語になったといえます。『キング・コング』(1933年)の登場から88年が経とうとしています。現在、『ゴジラVSコング』の続編が製作中とのこと。人々に愛されるキングコングはこれからも語られていき、その世界はさらに拡大していくのでしょう。