1980年にアメリカでテレビドラマ『将軍 SHOGUN』が放送され、大ヒットしました。日本でも同年、再編集版が映画館で上映され、翌1981年にテレビドラマが放送されました。リチャード・チェンバレンが、徳川家康に仕えたウィリアム・アダムス(三浦按針)をモデルにした人物を演じ、三船敏郎や島田陽子の共演も話題になりました。『将軍 SHOGUN』のアメリカでの大ヒットや黒澤明の映画が海外でも注目されてきたことから、日本のサムライは、外国人にとって異国情緒を感じさせる魅力的なキャラクターなのだとわかります。
『兜/KABUTO』は、『将軍 SHOGUN』に影響されているといえます。東洋と西洋の出会いをサムライを題材に描いていますし、『将軍 SHOGUN』に徳川家康をモデルにした役で出演した三船敏郎が、『兜/KABUTO』にも徳川家康役で出演しています。また、海外公開タイトルも “Shogun Mayeda”というぐあいに『将軍 SHOGUN』を想起させるものになっています。ですが、『将軍 SHOGUN』が海外から来た外国人が日本で送る数奇な人生を描いているのに対し、『兜/KABUTO』は、日本のサムライが外国で活躍する冒険譚というふうにドラマの作りは対照的です。したがって、『将軍 SHOGUN』では、観客はリチャード・チェンバレン演じる主人公の目を通して日本という異文化を体験するのに対して、『兜/KABUTO』では、ショー・コスギ演じる前田大五郎の目を通してヨーロッパという異文化を体験することになります。