日本のサムライという東洋のキャラクターとヨーロッパという舞台が合わさり、異文化接触が生み出す面白さが、ドラマのいたるところに仕掛けられていて、『兜/KABUTO』の見どころを作り出しています。このあたりから、『兜/KABUTO』は、アメリカという異文化で苦労し、ニンジャ映画で人気を得て、日本人初のハリウッド100万ドルスターになったショー・コスギだからこそ作り得た映画と言えるでしょう。日本のサムライが外国を舞台に大暴れする映画というとあまりありません。三船敏郎がサムライを演じた西部劇『レッド・サン』(1971年)、藤岡弘、が現代のアメリカによみがえったサムライを演じた『SFソードキル』(1984年)、そして岡本喜八監督がアメリカでロケし、真田広之演じるサムライと竹中直人演じる忍者が活躍する西部劇『EAST MEETS WEST』(1995年)ぐらいでしょう。あと、日本のアニメ映画で忍者がアメリカで活躍する『カムイの剣』(1985年)も同じ範疇の作品といえます。『兜/KABUTO』は、日本のサムライがインディ・ジョーンズばりの冒険を繰り広げるという点で、それまでの外国を舞台にしたサムライ映画を大きく刷新しました。また、日本刀を使ったアクションもヨーロッパの騎士との戦いで繰り広げられるという点で、日本の時代劇の殺陣というより、ケビン・コスナー主演の『ロビン・フッド』(1991年)やチャーリー・シーン主演の『三銃士』(1993年)、ジャスティン・チェンバース主演の『ヤング・ブラッド』(2001年)などの剣戟アクションに近いです。『兜/KABUTO』には、異文化接触を軸に冒険活劇と剣戟アクションを組み合わせた楽しさがあります。