この2年間だけでも、日本では昨年公開された『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021年)を始め、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022年)、『ソー: ラブ&サンダー』(2022年)、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(2022年)、『アントマン&ワスプ: クアントマニア』(2023年)、そして、現在公開中の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(2023年)と、コンスタントに発表されるMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の快進撃は、今やとどまるところを知りません。しかし、1980年代のアメコミ原作映画は、マーベル・コミックのライバル、DCコミックの一人勝ちでした。『未知との遭遇』と『スター・ウォーズ』(ともに1977年)が映画界にもたらした「SF映画の時代」。その流れの中でDCコミック原作の『スーパーマン』(1978年)がSF大作として製作され、大ヒット。80年代はその続編が次々に公開されました。第1作と同時に作られていた『スーパーマンⅡ/冒険篇』(1980年)も大ヒット。第3作『スーパーマンⅢ/電子の要塞』(1983年)は、日本では『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』(1983年)、『007/オクトパシー』(1983年)と同時期に公開され、83年の夏休みの興行を賑やかせました。翌84年には、番外編『スーパーガール』が公開。プロデューサー陣がガラッと入れ替わった第4作『スーパーマン4/最強の敵』(1987年)の興行的失敗で『スーパーマン』シリーズは、一時中断しますが、代わって登場したティム・バートン監督の超大作『バットマン』(1989年)が大ヒットし、DCコミックは、90年代にその続編を3作公開しました。『スーパーマン』シリーズと『バットマン』シリーズでDCコミックが大いに気を吐いていた80年代ですが、マーベル・コミックは、ただそれを黙って見ていたわけではありませんでした。ジョージ・ルーカスがマーベル・コミック原作の『ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀』(1986年)を大作として製作します。これは、愛すべき作品ですが(私は公開当時、満員の映画館で鑑賞しました)、残念なことに評価は決して高くありません。その次に登場したのが『パニッシャー』でした。そのあとアルバート・ピュン監督による『キャプテン・アメリカ/帝国の野望』(1990年)が作られましたが、日本では劇場公開されませんでした(レンタルビデオで公開)。80年代から90年代にかけては、マーベル・コミックにとって、権利問題などが絡み、うまく映画製作に進出することができない時代でした。マーベル・コミックが映画で成功するのは、『ブレイド』(1998年)と『X-MEN』(2000年)の大ヒットから。この2作を起点にマーベル映画が、市民権を得て現在のMCUの成功につながっていきます。80年代の 『ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀』や『パニッシャー』は、言うなればマーベル・コミックが映画界に進出しようとする試行錯誤の時代の産物。したがって、マーベル映画の黎明期の作品といえるでしょう。