パニッシャーに扮したドルフ・ラングレンは、当時、シルベスター・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーに続くアクション俳優として売り出し中で、『人間核弾頭』というキャッチコピーをつけて、その主演作が次々に公開されていました。ですがドルフ・ラングレンが主演したこの『パニッシャー』は、アメリカでは劇場公開されず、レンタルビデオで公開されました。その後、2000年代に入り、マーベル・コミック原作の映画が続々と製作される中で、パニッシャーも映画となって復活しました。『ダイ・ハード3』(1995年)の脚本で知られるジョナサン・ヘンズレーが監督し、パニッシャーにトーマス・ジェーン、対する悪役にジョン・トラボルタが扮した『パニッシャー』(2004年)が公開。これは、FBI捜査官フランク・キャッスルがいかにしてパニッシャーに変貌したのかを丁寧に描く”パニッシャー・ビギンズ”ともいえる一編です。フランク・キャッスルの家族が惨殺されたり、仲間が拷問されるなど、バイオレンス度の高いシーンが続出します。その4年後にパニッシャーはリブートされ、『パニッシャー: ウォーゾーン』(2008年)が公開されました。レイ・スティーヴンソン演じるパニッシャーは、熟練の戦士で、渋いヒーローとして描かれました。しかし、ドミニク・ウェスト演じる敵役のジグソウの狂気じみたキャラクターが、その顔面が破壊されているメーキャップと相まってパニッシャーよりも強烈な印象を残す作品になっています。
ドルフ・ラングレン主演版『パニッシャー』(1989年)、トーマス・ジェーン主演版『パニッシャー』(2004年)、 『パニッシャー: ウォーゾーン』(2008年) の3作を私は勝手に『パニッシャー』3部作と呼んでいるのですが、これらは異なる魅力をもちながら、いくつかの点で共通しています。ドルフ・ラングレン主演版『パニッシャー』と『パニッシャー: ウォーゾーン』は、パニッシャーがすでに存在しているという前提でストーリーが始まります。 ドルフ・ラングレン主演版『パニッシャー』 では、パニッシャーはトレードマークの髑髏マークを身にまとっていませんが、トーマス・ジェーン主演版『パニッシャー』ではTシャツ、『パニッシャー: ウォーゾーン』 ではアーマーに髑髏マークが描かれています。 また、トーマス・ジェーン主演版『パニッシャー』と『パニッシャー: ウォーゾーン』がシリアスな作風に対して、 ドルフ・ラングレン主演版『パニッシャー』 はユーモアを感じさせます。シルベスター・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーは、映画の中で敵を殺す前に笑いを誘うセリフを吐きますが、ドルフ・ラングレンのパニッシャーもそれを踏襲しています。パニッシャーが髑髏マークのスーツを着ていない点で不満を感じるアメコミファンも多いようですが、あくまでハードアクションを目指して作られた ドルフ・ラングレン主演版『パニッシャー』 は、劇中で着ている黒の衣装が合っているように思います。
私は、『パニッシャー』を大学生のころ、京都の京都ロキシーで鑑賞しました。パニッシャーとマフィアと日本のヤクザ組織の三つ巴の戦いを描くストーリーとドルフ・ラングレンが繰り出す怒涛のアクションを楽しんだことを覚えています。