パニッシャー(1989年)(8)

パニッシャー(1989年オーストラリア 日本公開: 1990年)The Punisher

8. 見どころ③!~ 復讐の連鎖が行き着くところは?~

 この映画の大きなテーマの一つは、「救い」だといえます。パニッシャーは、哀しいヒーローです。家族を殺害されたパニッシャーは、悪を殺すことに取り憑かれていて、神に救いを求めますが、救われないという無間地獄の中に入り込んでいます。下水溝の隠れ家での「神よ、答えてくれ。なぜ悪が生き延びているのか?神よ、正義とは何だ?神よ、直ちに命ぜよ。俺を正義の使者として遣わし、悪を俺に処刑しろと」というパニッシャーの祈りの声は悲痛で、永遠に続く自問自答のように聞こえます。神に祈るパニッシャーは、迷える存在です。迷いながら悪を処刑しているのです。したがって、パニッシャーの悪への制裁は、「救い」を求めるがゆえの行為といえます。しかし、パニッシャーの行為は、復讐の連鎖を引き起こし、悪循環でしかないことが映画で描かれます。パニッシャーによる125人もの犯罪者の殺人は、フランコのマフィアを弱体化させましたが、ヤクザというさらに巨大な悪が街に入り込む隙を与えることになりました。そこから無垢な子どもたちの誘拐事件、トミーを救出したいフランコによるジェイクの拉致といった事件が連鎖的に発生し、ついにはトミーの目の前でパニッシャーはその父親フランコを殺すという悲劇的な結末に至るのです。
 劇中、フランコに「復讐にも限界があるはずだ」と問われたパニッシャーは、「俺のはまだだ」と平然とした表情で答えます。パニッシャーが無間地獄から解放され、安息を見出すこと日は訪れるのでしょうか。復讐に意味があるのか?という人間の根源的な疑問を映画はパニッシャーを通して、観客に問いかけているのです。

『パニッシャー』(1989年)(9)見どころ④!~ジェイクの喪失の物語!~

けんいち

管理人のけんいちです。 関西在住の映画の思い出ライター、映画グッズコレクターです。