空海の生涯は、映画人にとっても魅力的な題材のようで、何度か映画化されています。佐藤純彌監督の『空海』(1984年)は、空海の幼少期から入定までを壮大なスケールで描いた3時間の大作。空海に北大路欣也、最澄に加藤剛のほかオールスターキャストで、遣唐使船の再現も話題になりました。『空海』の7年後に空海の中国留学を中心に描いたのが『曼荼羅 若き日の弘法大師・空海』(1991年)。そして、21世紀に入り、夢枕獏の小説「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」を映画化したチェン・カイコー監督の『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』(2017年)が作られました。こちらは染谷将太演じる空海が、ホアン・シュアン演じる白楽天と、長安で黒猫が関わる殺人事件の謎を追い、楊貴妃の死の真相に行きつくという歴史ミステリー。豪華絢爛なセットと最先端のVFX技術を駆使した美しい映像が見どころです。私は勝手に『空海』三部作と呼んでいますが、これら三つの映画は、空海をそれぞれ異なるアプローチで描き、独自の味わいがあります。そして、三つとも空海を魅力溢れる人物として描くことに成功している点で共通しています。