『愛と野望のナイル』は、19世紀の探検家であるリチャード・フランシス・バートンとジョン・ハニング・スピークのナイル川水源の探検行を描いています。『インディ・ジョーンズ』シリーズ(1981年~2008年)や『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』(1984年)とその続編『ナイルの宝石』(1985年)、『ロマンシング・アドベンチャー/キング・ソロモンの秘宝』シリーズ(1985年~1986年)、『トゥームレイダー』シリーズ(2001年~2018年)など、架空の冒険家を主人公にした奇想天外な映画は多くありますが、『愛と野望のナイル』のように実在の探検家を描いた映画は珍しいといえます。『愛と野望のナイル』とよく似た雰囲気をもつ映画に、同じくアフリカを舞台にした実話の映画化『ゴースト&ダークネス』(1996年)がありますが、こちらは凶暴なライオンと人間の戦いを描いた動物パニックもの。『愛と野望のナイル』は、探検家を描いた風格ある歴史ドラマとして稀有な存在といえるでしょう。
私は、『愛と野望のナイル』を大学生のころ、大阪梅田のOS劇場で鑑賞しました。シネラマの大画面に繰り広げられる探検行の迫力ある描写と重厚なドラマを楽しみました。19世紀のビクトリア朝イギリスと当時、未知の世界だったアフリカがスクリーンに再現されていて、そのダイナミックな映像に圧倒されました。1950年代から60年代に数多く作られた史劇映画のイメージを重ねたことを覚えています。