『愛と野望のナイル』の製作は、マリオ・カサールとアンドリュー・G・バイナが設立したカロルコ・ピクチャーズによるもの。カロルコ・ピクチャーズは、『ランボー』シリーズ(1982年~1988年)で成功し、1980年代後半から90年代前半にかけてSF映画やアクション映画の大作を次々に発表、興行界を賑わせていきました。特に『トータル・リコール』(1990年)、『ターミネーター2』(1991年)、『クリフハンガー』(1993年)は大ヒットしました。そのほか、ウォルター・ヒル監督の『ダブルボーダー』(1987年)、『レッドブル』(1988年)、『ジョニー・ハンサム』(1989年)、ローランド・エメリッヒ監督の『ユニバーサル・ソルジャー』(1992年)、『スターゲイト』(1994年)などを製作。また、ポール・バーホーベン監督の『氷の微笑』(1992年)は、シャロン・ストーンがスターダムに駆け上がるきっかけになりました。これらSF映画やアクション映画で成功してきたカロルコ・ピクチャーズですが、1989年のコスタ・ガブラス監督の『ミュージック・ボックス』あたりから、ドラマを重視した作品も手がけるようになります。それに続いて『L.A.ストーリー/恋が降る街』(1991年)、『ランブリング・ローズ』(1991年)、『ドアーズ』(1991年) といったドラマの好編が作られました。リチャード・アッテンボロー監督による喜劇王チャールズ・チャップリンの伝記映画『チャーリー』(1992年)は話題になり、チャップリンに扮したロバート・ダウニー・Jr.は、アカデミー賞の主演男優賞にノミネートされました。『愛と野望のナイル』は、カロルコ・ピクチャーズがドラマ重視の作品を開拓し始めたころに放たれた一編です。忠実に再現された19世紀を舞台に、二人の探検家リチャード・バートンとジョン・スピークの友情と確執のドラマが格調高く描かれています。
その後、『ショーガール』(1995年)と『カット・スロート・アイランド』(1995年)が興行的に失敗し、カロルコ・ピクチャーズは残念ながら倒産してしまいました。カロルコ・ピクチャーズの映画には、『ランボー』シリーズ、『トータル・リコール』、『ターミネーター2』、『クリフハンガー』などのよく知られた大作以外にも、『愛と野望のナイル』をはじめ力作、野心作が多く、それらの作品の再評価が望まれます。