2人の主人公、リチャード・バートン役とジョン・スピーク役にフレッシュな新人が起用されました。また2人の脇を固める役柄にも、今はベテランですが、当時は新進気鋭の俳優たちがキャスティングされています。これにより『愛と野望のナイル』は、俳優のイメージからくる先入観なしに、観客をドラマに誘うことに成功しています。
リチャード・バートンにパトリック・バージン。『愛がこわれるとき』(1991年)では、ジュリア・ロバーツのサイコパスの夫を演じ、ケビン・コスナー主演版と競作になった『ロビン・フッド』(1991年)では、タイトルロールを演じました。パトリック・バージン主演版『ロビン・フッド』は、アメリカではテレビで放映されましたが、日本では劇場公開されています。一級の娯楽作に仕上がっていたケビン・コスナー主演版に対して、パトリック・バージン主演版は、歴史考証に忠実なシリアスな作風でした。ほかにパトリック・バージンは、『パトリオット・ゲーム』(1992年)、『バーチャル・ウォーズ2』(1996年)、『氷の接吻』(1999年)などに出演。『パトリオット・ゲーム』では、ハリソン・フォード演じるジャック・ライアンと対決するテロリストを演じました。
ジョン・スピークにイエーン・グレン。シガーニー・ウィーバー主演の『愛は霧のかなたに』(1988年)でデビューし、『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』(1990年)、『プレイデッド』(1993年)、『トゥームレイダー』(2001年)、『ダークネス』(2002年)などに出演。日本では、ゾルゲ事件を描いた篠田正浩監督の大作『スパイ・ゾルゲ』(2003年)でタイトルロールを演じたことでも知られています。また、『バイオハザード』シリーズの2作目『バイオハザードⅡ アポカリプス』(2004年)から6作目『バイオハザード: ザ・ファイナル』(2016年)まで(4作目は除く)で演じたアイザックス博士役でもおなじみです。
リチャード・バートンの妻イザベルにフィオナ・ショー。フィオナ・ショーは、『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001年)とその4つの続編で演じたハリー・ポッターの伯母ペチュニア・ダーズリー役で知られていますが、当時は、『マイ・レフトフット』(1989年)で映画デビューしたばかりでした(『愛と野望のナイル』が映画出演2作目)。ほかに、『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』(1993年)、『アベンジャーズ』(1998年)、『エノーラ・ホームズの事件簿』(2020年)などに出演しています。
出版者ローレンス・オリファントにリチャード・E・グラント。リチャード・E・グラントも当時はまだ売り出し中でした。『愛と野望のナイル』のあと、『ハドソン・ホーク』(1991年)、『ザ・プレイヤー』(1992年)、『ドラキュラ』(1992年)、『エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき情事』(1993年)などに出演。近年も『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』(2016年)、『LOGAN/ローガン』(2017年)、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019年)などで活躍しています。『ある女流作家の罪と罰』(2018年)では、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされました。
探検家デビッド・リビングストンに『バウンティ/愛と反乱の航海』(1984年)などに出演していたバーナード・ヒル。バーナード・ヒルも『愛と野望のナイル』のあと、『ゴースト&ダークネス』(1996年)、『タイタニック』(1997年)、『トゥルー・クライム』(1999年)などに出演し、名を上げます。また、『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』(2002年)と『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(2003年)で演じたセオデン王役でも広く知られています。
逃亡奴隷のマブリキにデルロイ・リンドー。デルロイ・リンドーも当時はまだ新人。このあと、スパイク・リー監督の『マルコムX』(1992年)、『クルックリン』(1994年)、『クロッカーズ』(1995年)で注目されます。そして、『ゲット・ショーティ』(1995年)、『ブロークン・アロー』(1996年)、『身代金』(1996年)などの大作に出演。近年も『サハラ 死の砂漠を脱出せよ』(2005年)、『X-ミッション』(2015年)などで活躍しています。
『愛と野望のナイル』は、その後の映画界で活躍する実力派の俳優たちが、キャリアの初期に共演した作品としても楽しめます。