カルロスによって壊されたカフェや部屋が、エイリアンの夫婦によって元どおりになるという奇跡で始まり、あっと驚く痛快な奇跡で幕を下ろす『ニューヨーク東8番街の奇跡』。しかし、エイリアンがもたらしたものは、それらだけではありません。エイリアンとの交流を通して、アパートの住人たちは親しくなり、家族のような関係になっていきます。フランクもメイスンもマリッサも、それまでは互いにお隣さんという印象しかもっていませんでした。それが互いによく知り合い、助け合うようになります。その意味で『ニューヨーク東8番街の奇跡』は、住人たちの出会い直しの物語といえます。それまであまり関わりがなかった住人たちが、やがて互いにとって、かけがえのない存在になっていくのです。例えば、いつまでもヘクターというボーイフレンドのミュージシャンが助けに来てくれると信じている妊婦のマリッサですが、ヘクターは一度立ち寄っただけでまた消えてしまいます。メイスンはそんなマリッサをいたわります。フランク、フェイ、メイスン、マリッサ、ハリーはエイリアンとの交流が深まるにつれて、明るく元気になっていき、団結していきます。アパートの電気と水道を止め、夫のエイリアンを壊したカルロスを力を合わせて撃退します。
エイリアンの夫婦が、フランクとフェイの夫婦と出会い、ドラマが始まります。そして、エイリアンが家族5人になるにつれ、フランクとフェイもメイスン、マリッサ、ハリーという5人の仲間になるという相似形を描きます。ドラマの作り手も、フランクらを5人の疑似家族として描いているのでしょう。
また、エイリアンとの交流のドラマはカルロスの改心ももたらします。爆発するアパートから、カルロスはフェイを助け出し、病院のフェイに見舞いに来るまでになります。さらに、再開発の作業員たちもアパートの焼け跡に座るハリーを見て作業の手を止めます。
『ニューヨーク東8番街の奇跡』が描く奇跡とは、5人のアパートの住人の温かい心の交流と、カルロスや再開発の作業員にもたらされた優しい心のことだいえます。