ユニークと言えば、『ダーク・エンジェル』には、ジャックの友人で変人の研究者が出てきます。ノイローゼ気味で、突然叫びだしたり、実験台の上で変な体操みたいなのを始めます。この内向的でエキセントリックなキャラクターは、行動的なドルフ・ラングレン演じる刑事ジャックと対照的で笑わせます。
『ダーク・エンジェル』の見どころは、何といってもパイロ・テクニックを駆使した炎の描写でしょう。パイロ・テクニックは、爆破や炎を扱うSFXです。ラストは、発電所を舞台に一面火だるまの中、ドルフ・ラングレン演じる刑事とエイリアンの戦いが繰り広げられます。エイリアンの強力な武器が何度も放たれ、そのたびに巨大な爆破が起こり、画面が炎でいっぱいになります。その炎の迫力に驚きました。この場面だけで入場料の価値はあると思いました。『タワーリング・インフェルノ』(1974年)から、パイロ・テクニックは大掛かりになっていきます。『炎の少女チャーリー』(1984年)では、火球のような炎が人間を襲う場面がラストに登場します。そして、『ダーク・ジェル』の翌年の『バックドラフト』(1991年)では、まるで生きているかのような炎を演出できるようになります。パイロ・テクニックの発達の途上に登場した『ダーク・エンジェル』は、低予算ながら大迫力の炎の描写に成功しています。