1970年代末から1980年代のSF映画は、印象的なオープニングをもつ作品が多いです。やはり、『スター・ウォーズ』(1977年)のオープニングの観客の頭上を通過するスターデストロイヤーの度肝を抜く迫力に負けじと、映画人たちは創意工夫をもって作品作りに挑んでいったのでしょう。『砂の惑星』のオープニングは、意外にも女性の顔が映し出され、その女性が静かに語りだすという、これまた観客の想像の斜め上を行くものでした。神話を語る巫女のようです。この女性はシャダム4世大王皇帝の娘のイルーラン姫で、イルーラン姫の語りによって私たち観客は『砂の惑星』の世界へといざなわれていくのです。イルーラン姫は、皇帝、大公家連合、スペーシング・ギルドのバランスによって宇宙が保たれていること、惑星アラキスのスパイス・メランジのこと、スペーシング・ギルドのナビゲーターの恒星間移動の方法、アラキスの砂漠の民フレーメンの救世主の預言などを説明していきます。そして、この語りの後にアラキスの砂嵐が舞う砂漠が映し出され、タイトルの<DUNE>の文字が現れます。印象に残るオープニングです。私は、『砂の惑星』といえば、このイルーラン姫の語りによるオープニングが思い浮かびます。
イルーラン姫の語りは、原作者フランク・ハーバートが創造した専門用語を観客に理解させるのに有効に働いています。劇中もイルーラン姫の解説と主人公ポールの内面の声がたびたびナレーションとして登場します。ナレーションの多用は特に映像で見せるSF映画では映画的ではなくなりますが、長大な原作小説を一気に見せきるのには必要だったのでしょう。専門用語が多く登場するため、公開時は意味不明といった声が聞かれ、評価が低かったのですが、今見直すと、ナレーションによって映画が軽快に進んでいくと感じられます。