『ブレードランナー』(1982年)は、それまでの近未来SF映画を刷新し、1980年代から90年代にかけて、このジャンルの映画が次々と作られるきっかけになりました。当時SF小説の世界で隆盛していた<サイバーパンク>がこの流れをさらに勢いづけたといえます。
このころ作られた近未来SF映画は、それぞれユニークな切り口で近未来世界を描いていました。『ブレードランナー』と同年に公開された『トロン』(1982年)は、CGを大胆に導入し、コンピュータ内部の世界を擬人的に描くことに成功しました。『ターミネーター』(1984年)は、近未来の人類と機械の戦いを印象的なタッチで映しだしながら、その未来を左右する戦いを現在を舞台に描いています。『未来世紀ブラジル』(1985年)は、ジョージ・オーウェル的な近未来の管理社会の恐怖を描きました。『バトルランナー』(1987年)は、近未来の殺人ゲームを描きながら、マスメディアへの皮肉もこめられていました。『ロボコップ』(1987年)は、殺伐とした近未来社会を舞台にサイボーグ警官の活躍を描くと同時に、企業が市民社会を支配する怖さも描いています。3年後には続編『ロボコップ2』(1990年)が登場しました。『ブレードランナー』の原作者フィリップ・K・ディックの短編小説を基に作られた『トータル・リコール』(1990年)は、近未来の火星の描写が楽しいアクション映画に仕上がっていました。そして、日本では1991年の8月に『ターミネーター2』が公開。前作『ターミネーター』をあらゆる面でパワーアップさせた大作で大ヒットしました。その興奮がまだ醒めやまぬ1992年4月に公開されたのが『フリージャック』です。『ターミネーター』シリーズ(1984年~2019年)と同様タイムトラベルの要素を取り入れ、近未来の人間が現在の人間を拉致するというこれまたユニークな設定で楽しませてくれる佳作に仕上がっています。
私は、『フリージャック』を公開当時、京都の京極東宝で鑑賞しました。魅力的なキャラクターと意外なストーリー展開を楽しみました。