アメコミ映画が大人気です。アイアンマンやスパイダーマンが大活躍するMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の映画も、バットマンやスーパーマンが共に戦うDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)の映画も、どちらも熱狂的な支持を得ています。現代のアメコミ映画の隆盛は、『X-MEN』(2000年)と『スパイダーマン』(2002年)の大ヒットを起源にしています。2000年代前半に数多くのアメコミ映画がヒットを飛ばし、その流れが『アイアンマン』(2008年)を第1作とするMCUの誕生につながりました。そんなMCU誕生前夜の2005年にDCコミック原作のアメコミ・ヒーローもの『コンスタンティン』が作られています。悪魔祓い師(エクソシスト)の探偵ジョン・コンスタンティンが、人間界へ侵入しようとする悪魔と戦うというもので、地獄の描写など奇想天外な映像が楽しめます。タイトル・ロールを演じたのは、キアヌ・リーブス。コンスタンティンが、厭世的なキャラクターに描かれていてハードボイルド的な魅力がありました。キリスト教に基づく宗教コミック・ヒーローという異色作に仕上がっています。『コンスタンティン』に先立つこと17年、日本の宗教コミック・ヒーローがスクリーンに登場しました。それが『孔雀王』です。神秘的なパワーを操る密教僧・孔雀が、ラマ僧のコンチェとタッグを組み、邪悪な勢力と戦う姿が描かれます。日本と香港の合作映画で、日本の最先端のSFX技術と香港映画の迫力のアクション描写が見事に融合した快作に仕上がりました。
『孔雀王』は1988年12月に公開され、同時期の『ロジャー・ラビット』(1988年)や『3人のゴースト』(1988年)、『ミッドナイト・ラン』(1988年)、『星の王子ニューヨークへ行く』(1988年)などの大作群と共に、1989年のお正月映画の興行を賑わせました。映画雑誌の『ロードショー』などでもグラビアで紹介され、洋画のような印象を与える宣伝が繰り広げられていたことを覚えています。私は、大学生のとき、『孔雀王』を地元の映画館で鑑賞しました。元来SF映画・特撮映画ファンの私は、『孔雀王』にも、当時、日進月歩で発達する日本特撮のおもしろさを目撃し、大いに胸を躍らせました。また、コミック・ヒーローといえばまだ『スーパーマン』シリーズ(1978年~1987年)ぐらいしかないころ。そこに颯爽と登場した日本人ヒーロー・孔雀の活躍を楽しみました。