当時、テレビのトレンディドラマで活躍していた三上博史と安田成美が、主人公の孔雀とヒロインの風間冴子を演じています。孔雀の師匠・慈空には緒形拳。このころの緒形拳はテレビドラマ、映画に引っ張りだこの状態でした。1988年12月に『孔雀王』が公開されたあと、翌1989年1月には、正月第二弾として公開された久々の東映時代劇の大作『将軍家光の乱心 激突』(1989年)で主役を演じています。さらに翌2月公開の勝新太郎監督・主演の『座頭市』(1989年)にも出演。座頭市と対決する浪人を貫禄たっぷりに演じました。6月には主演作『社葬』(1989年)が公開。この年の東映映画の大ヒット作になりました。その後も2000年代半ばまでコンスタントに映画に出演した緒形拳は、日本を代表する名優の一人として今も多くの人々に支持されています。ほかに、冴子の上司・佐藤に左とん平。また、お笑い芸人のコント山口君と竹田君が、東京の刑事役で出演しています。
これら日本人キャストに香港からの俳優陣が加わりました。孔雀とコンビを組むコンチェにユン・ピョウ。ジャッキー・チェン、サモ・ハン・キンポーと共演した『プロジェクトA』(1983年)、『スパルタンX』(1984年)などで人気を得ました。単独主演作『蜀山奇傅 天空の剣 』(1983年)、『チャンピオン鷹』(1983年)、『検事Mr.ハー/俺が法律だ』(1986年)も日本で公開されています。中でも『蜀山奇傅 天空の剣 』は、香港映画のSFX技術を底上げした作品としても知られています。再びコンチェを演じた続編の『孔雀王/アシュラ伝説』(1990年)のほか、『バカヤロー!4 YOU! お前のことだよ』(1991年)、『落陽』(1992年)など、日本映画でも活躍しました。映画のキーパーソンとなる少女アシュラにグロリア・イップ。『孔雀王』で注目され、翌年にはジャッキー・チェン監督・主演の大作『奇蹟 ミラクル』(1990年)に出演しました。続編の『孔雀王/アシュラ伝説』でも、同じアシュラを演じています。宮毘羅(クビラ)に『少林寺三十六房』(1978年)のリュー・チャーフィー。『少林寺三十六房』は、リー・リンチェイ(現ジェット・リー)主演の『少林寺』(1982年)の大ヒットを受けて、日本では1983年に公開され、注目されました。その後もカンフー映画で活躍したリュー・チャーフィーは、2000年代に入ると、クエンティン・タランティーノ監督の『キル・ビルVol.1』(2003年)、『キル・ビルVol.2』(2004年)にゴードン・リューの名で出演しました。羅我(ラガ)に日本でも大ヒットした『霊幻道士』(1985年)のポーリン・ウォン、コンチェの師のジグメに『チャンピオン鷹』でもユン・ピョウと共演したコウ・ホンが扮しています。
このように『孔雀王』には、日本・香港の魅力的なキャストが勢揃いしています。