『オズ』は、『スター・ウォーズ』にはじまる80年代のSF映画やファンタジー映画に共通して、場面展開が早く、疾走感に溢れています。特にガンプによる飛翔シーンはその疾走感が頂点に達する場面といえるでしょう。この飛翔シーンは、『スーパーマン』の飛翔シーンのSFXを手がけたゾーラン・ペリシックによるもので、見どころになっています。
モンビ王女が自分の首を付け替えるシーンもSFXの見どころです。ドロシーが、モンビ王女から命の粉を盗み取るときに、ケースに入れられているモンビ王女のたくさんの首がいっせいに叫びだすシーンは、『オズ』の中でも不気味さの極みでしょう。
ノーム王を描くクレイ・アニメーションは、『オズ』のハイライトの一つです。現在ならCGで再現すると思われるノーム王の描写には、たいへんスムーズなクレイ・アニメーションが使われています。山の岩壁に現れる巨大な顔として登場し、それが徐々に等身大になり、いつの間にかニコル・ウィリアムソン演じるノーム王になっているというトランスフォーメーション・シークエンスは、クレイ・アニメーション、メイク・アップ、演出、編集が融合した見事な場面です。また、巨大な岩の怪物として全貌を現すノーム王がジャック・パンプキンヘッドを食べようとする場面や、壁という壁が次から次に岩の怪人になってドロシーたちを襲ってくる場面のクレイ・アニメーションも迫力があります。岩の顔の表情の豊かさや、岩が腕となって手招きする動きの滑らかさなども特筆すべき描写です。
キャラクター造形の点で『オズの魔法使い』に影響を受けた『スター・ウォーズ』でしたが、今度は、『スター・ウォーズ』にはじまる疾走感に満ちた展開、最先端のSFXの活用が、『オズ』に大きな影響を与えているといえます。