まさにファンタジーの王道を行くストーリー。魔法の絨毯や魔法の馬、正邪殿、透視眼、壺の怪人などのキャラクターやアイテムが特撮を駆使して描かれます。また、タージ王子と巨大な壺の怪人のコミカルなやりとりも見どころです。
特撮は、現在のVFXの水準から見ると見劣りしますが、当時としては最先端の技術が駆使されていて、当時の観客は(私も含めて)胸躍らせました。
中でも空飛ぶ絨毯の描写は、合成だと丸わかりですが、当時としては目新しかったのを覚えています。実は、『バグダッドの盗賊』の空飛ぶ絨毯のシーンは、『スーパーマン』(1978年)の飛翔シーンを担当したゾーラン・ペリシックによるもの。『バグダッドの盗賊』で用いられたゾプティック・フロント・プロジェクションの技術が『スーパーマン』で確立することになります。日本では、『バグダッドの盗賊』の半年後に、『スーパーマン』が公開されました。
『スーパーマン』は宣伝の惹句が「あなたも空を翔べる!」でしたが、半年前に私は『バグッダッドの盗賊』の空飛ぶ絨毯ですでに飛翔体験済みでした。したがって『スーパーマン』にはあまり興味が湧かず、同時期公開の『銀河鉄道999』(1979年)に熱中したことを覚えています。
私にとって「あなたも空を翔べる!」は、『スーパーマン』より半年早かったのです。